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進化において、種形成がどのような機構で起こっているか、といった問題は重要である。当然ではあるが、この問題に関しても研究は進められている。その一例が、平成14年度発足特定領域文部科学省科学研究費補助金「特定領域研究」種形成の分子機構(領域代表者 岡田典弘(東京工業大学大学院生命理工学研究科 教授)))である*1。
この研究の概要を読めば、「種形成の分子レベルでの機構解明」といった研究が現実に行われていることがわかる。この中には、A05のように、人工的に倍数体を導入することにより種分化を引き起こす研究が含まれている。進化否定論者の中に、「種内の進化は認めるが種分化すなわち新しい種が生じるような進化の実例は認められない」、といった考えを持つものがいるが、それが誤りであることがわかる。 次に、種分化における正の選択例について最近の研究に触れてみる。 これは宮田隆を研究代表者とする文科省科研費による研究である「生物多様性の分子生物学」の中の、岡田(東工大)らによる「ビクトリア湖に棲息する魚類シクリッドの多様性と種分化の分子機構」からの抜粋である。 (引用開始) シクリッドとはカワスズメ科魚類の総称で世界の熱帯域に広く分布している。しかしそれらの種の約7割。千数百種はアフリカのたった3つの湖に生息し、この種数は世界に生息する全淡水魚の10%にも及ぶ。 (中略) これまでに私達のグループではヴィクトリア湖のシクリッドの遺伝的背景を種々の分子マーカー(SINEs:短い散在性の反復配列、核DNA、ミトコンドリアDNA)を用いて調べてきた。その結果、ヴィクトリア湖のシクリッドすべての種において一つの種で見られる種内の中立的な核DNAの変異の多型は他の種でも保持されていること、つまり種特異的な中立的な変異が見いだされないことを明らかにしてきた。これは短期間に種分化を起こしたため中立的変異が固定していないまま種が分かれたためだと考えられる。またこれらの中立的な変異は100万年以上も前から河川の祖先種の集団において蓄積されてきた。このような遺伝的背景からはヴィクトリア湖のシクリッドはまだ種として未熟であり分化しきれていないように見えるが、しかしこれらの種は形態的、生態的には種として確立している。これらのことからヴィクトリア湖のシクリッドにおいて形態の形成や生態に関与し、かつ種の分化、形成にも関与した遺伝子の変異は強く正の選択を受けてきて種内にその変異が固定され種特異的な置換になっていると考えられる。 (以下略) ここに報告されているように、中立的変異の固定は正の選択を受けて固定される場合よりも遙かに世代数が必要だ。ヴィクトリア湖のシクリッドは自然選択の例としてしばしば研究対象として報告されている。 なお、この研究に関しては岡田教授の研究室のサイト*2において、特定領域研究の研究例としても紹介されている。 さて、このような中立である場合や正の淘汰がある場合の固定確率は集団遺伝学的にはどのように扱われているのだろうか?これについては後に議論してみる。 余談ではあるが、最初に述べたとおりこの研究は「生物多様性の分子生物学」というテーマではじめられた大きな研究の一部である。その研究内容は3を参照していただけるとわかる。 彼らの研究内容をみればわかるとおり、種以上の進化、いわゆる大進化に関する分子進化的研究も盛んになされている。この研究状況をみれば、進化否定論者がしばしば引き合いに出す「大進化に関する証拠がない」といった意見は、単にその発言者が知らないだけであることがわかる。 1:http://www.evolution.bio.titech.ac.jp/tokutei.html 2:http://www.evolution.bio.titech.ac.jp/ 3:http://www.biophys.kyoto-u.ac.jp/shin-pro.html PR
無題
たまたま昨日娘と見てたNHKにヴィクトリア湖のカワスズメが出てましたがな。受け売りで「こいつは良く進化学の研究材料になるんだよな」って、かっこつけてしもたw
あきさんおおきに!
大進化
「種以上の進化、いわゆる大進化に関する分子進化的研究も盛んになされている。この研究状況をみれば、進化否定論者がしばしば引き合いに出す「大進化に関する証拠がない」といった意見は、単にその発言者が知らないだけであることがわかる。」と書かれていますが、実際に大進化に関する証拠はあったのでしょうか?
よく知らないのですが。。 ただ、分子進化の研究が進んでいるのはよく分かりますが、それと大進化の証拠があるかないかとは、別の問題だと思いますが・・・ 素朴な疑問です。 |
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